DISCOVERY DENSEN

電線未来のはなし 石山蓮華×伊藤雅彦

世界を一瞬でつなぐ光ファイバケーブル光ファイバがつなぐ未来とは?電線アンバサダー石山蓮華さんが、日本電線工業会 伊藤雅彦会長にお話を聞きました。

石山 蓮華さん

1992年生まれ、日本電線工業会公認 電線アンバサダー
電線愛好家・文筆家・俳優として多方面で活躍。
TBSラジオ「こねくと」のパーソナリティを務める。
趣味は電線の写真を撮ること、短歌を詠むこと。

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伊藤 雅彦

日本電線工業会第52代会長(株式会社フジクラ 会長)
日本電線工業会の会員社は国内の電線製造会社のうち
110社あまり。約25社が光ファイバケーブルを製造し、
国内に留まらず世界の通信網を支えている。

以下、敬称略

伊藤直接お目にかかるのは、2022年6月の電線アンバサダー就任式以来ですね。電線アンバサダーとして、多くの方に電線をご紹介いただき、感謝しております。
石山さんは独特の感性をお持ちで、お使いになる素敵な言葉で電線を表現してくださってありがたいです。そして、身に着けてくださっているんですね。電線ペンダントが良くお似合いです。

石山ありがとうございます。これは、電線アンバサダー就任時にいただいた電線ペンダントです。
普段お世話になっている電線は、どのような方が、どのような想いで、どのような工程を経てつくられているのかを拝見する機会がぐっと増えました。電線アンバサダーとして会員社の製造現場を取材するのは、一回ごとが、かけがえのない機会です。とてもありがたく感じます。

伊藤訪問を受け入れてくださった会員社の方々にとって、取材を受けることは稀な機会であろうと思います。出演された方々は、生き生きと輝いて見えます。

石山日々の業務がある中で、わざわざ時間を割き、取材に対応くださっていることを忘れてはいけない。皆さまのお仕事や想いをまっすぐ伝えることを念頭に取り組んでおります。

伊藤電線アンバサダー以外のご活躍も目覚ましく、お忙しいと思いますが、執筆する時間はどのように作っていらっしゃるのですか。

石山移動時間やちょっとしたすき間時間に書くことも多いです。最近は、家の外で書くことも増えました。パソコンとタブレットを使っていまして、新幹線やカフェなどでWi-Fiを使い、クラウドにアップして入稿したり、編集者と写真を共有管理したりしています。

伊藤石山さんの創作活動を支えるWi-Fiは、無線通信技術の一つで、この技術に欠かせないのが光ファイバケーブルです。この先の未来、あらゆるものがインターネットでつながり、人々の生活はますます便利になると思います。例えば、自動車業界は100年に一度の大変革期と言われています。コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化の英語の頭文字をとってCASE※1と呼ばれる新しい領域での技術革新が始まろうとしています。今後、自動車はネットワークを通じてさまざまなサービスを提供する情報端末の機能を備えたモビリティになるのではと思います。当然、その通信量はとても大きいものとなりますので、光ファイバケーブルはますます重要になると考えています。
これは、データセンターなど高速で大容量のデータ通信に使われているケーブルです。

石山わぁ!すごく軽いですね。そして、メタルケーブルの断面は、導体、被覆、シースと幾層にもなっているのが見えますが、光ファイバケーブルの構造は、メタルケーブルとは違って見えますね。

伊藤さすが!よく電線をご存知ですね。これは中心のスロット※2をなくすことで軽くできたのです。技術者が試行錯誤を繰り返して、最終的にこの構造になりました。

石山ケーブル一本一本の色が、とてもきれいですね。

伊藤ケーブル同士をつなぐときに、識別できるよう色をつけています。

石山この髪の毛ほどの細さのケーブルをどうやって見分けてつなぐのでしょう?

伊藤実は、光ファイバ融着接続機(以下、融着機)というつなぐ機器があるのです。
光ファイバの仕組みを簡単に言いますと、種類の違う2層のガラスで出来ていまして、内側のガラスの中をホース内の水のように光の信号が流れます。ケーブル同士をつないで延ばしたいときに、銅線のケーブルは銅線同士を接触させれば電気が流れるのですが、光ファイバは2層のガラス部分がズレなく隙間なくぴったりとくっついてないと光の信号が流れません。この融着機を使うことで、髪の毛の細さのものをきれいにつなぐことができるのです。
その技術をご覧に入れましょう。フジクラの技術から黒坂さんに応援にきてもらいました。

黒坂よろしくお願いします。
これは光ファイバケーブルをつなぐ最新型の融着機です。鉄塔や電柱など高所で作業をするので、万一、落としても壊れない頑丈なつくりになっています。

伊藤より速く簡単に接続できる融着機の提供もメーカーの重要な仕事です。いかがでしょう、せっかくですから、融着技術を体験してみませんか。

石山はい!ぜひお願いします。

伊藤1ユニット12心(本)のケーブル同士がバチっと一瞬でつながります。

石山へぇー!

黒坂光ファイバケーブルは、ガラスでできています。わずかな破片でもケガをすることがあるので、危ないところは私に作業をさせてください。

石山はい、わかりました。

黒坂まず、接続するケーブルの先端を揃えます。これは作業していただきましょうか。

石山爪切りのようですね。先端がまっすぐになりました。

黒坂それではいよいよ融着機にセットします。カバーをしてボタンを押してください。モニターでファイバがつながれていく様子をリアルタイムで見ることができます。

石山ここですね? 行きまーす! おー!カッコイイですね。うわぁ!すごい。わ、一瞬ですね。つながってます!

黒坂融着作業が終わりました。外す時もガラスくずが飛び目に入るとたいへん危ないので、私が作業いたします。ここでガラスに補強をして、さぁ、こちらが一本につながったケーブルです。私が、力いっぱい引っ張っても切れるか切れないかくらいの強度でつながりました。この融着機で、きちんと信号が送られているかどうかの自己判定もできます。

石山おお!きれいですね。継ぎ目が全くわかりません。触ってみると柔らかさがよくわかります。ガラスがこれほど柔らかいとは…!
この融着作業が、布設現場で行われているんですね。

伊藤その通りです。6912心の光ファイバケーブルの布設現場では、600回近い融着作業を行います。以前は、一度の融着作業に1分かかっていた融着時間が8秒となり、作業時間を減らしています。

石山1ユニット12心ということですが、1心でどれくらいの通信ができるのでしょうか?

黒坂だいたい2時間の映画50本を1秒でダウンロードできるくらいです。

石山この細さで!本当にすごいですね。

伊藤携帯電話にはケーブルがない、とおっしゃる方がいますが、無線でつながれる携帯電話は、何千本もの目に見えない光ファイバケーブルが支えているのです。医療分野においては遠隔地診療の実用化など、未来にむかって大容量通信に必要とされる光ファイバケーブルの利用範囲は無限に広がっています。

石山そうですね。劇場に出かけることが当たり前だった観劇や演奏会なども、ライブ配信やオンデマンドなどで楽しむ機会が増えてきました。舞台に出演するときに、肌で感じる観客からの反応も励みになりますが、電線を通じ、距離や時間を超えてワクワクしてもらっているという新たな喜びも感じるようになりました。

伊藤ワクワクすると言えば、石山さんのブログ、電線ノートの新たなテーマ、電線を見上げながら街歩きを楽しむ「電線さんぽ」が楽しみです。私も、日本全国、いや世界中の電線を見る旅をしたいと思っています。機会がありましたら、ぜひご一緒させてください。

石山うれしいです。ぜひご一緒できたらと思います。

※1 CASE:「Connected」「Autonomous」「Sharing & Services」「Electric」の頭文字。
※2 スロット:ロッド(棒)状のプラスチック製品。周囲に光ファイバを収納する溝が配置されている。

INTERVIEW DATE:2023/3/13