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電線未来のはなし 石山蓮華×井上治

再生エネルギーの普及に伴い、改めて注目される「電気の運び方」。そんな送電インフラの未来について、電線アンバサダーの石山蓮華さんが、日本電線工業会 井上治会長にお話を聞きました。

石山 蓮華さん

1992年生まれ、日本電線工業会公認 電線アンバサダー
電線愛好家・文筆家・俳優として多方面で活躍。
TBSラジオ「こねくと」のパーソナリティを務める。
趣味は電線の写真を撮ること、短歌を詠むこと。

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井上 治会長

日本電線工業会 第 54代会長(住友電気工業株式会社 社長)
日本電線工業会の会員社は国内の電線製造会社のうち110社あまり。
明治時代から100年以上、日本の産業を支え続ける会員もいる。

以下、敬称略

石山井上さん、お久しぶりです。前回の対談が2022年でしたので、約4年ぶりに対談をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
電線未来のはなし#1はこちら

井上はい、何卒よろしくお願いします。

石山今回のテーマは「電気の運び方」についてです。
そもそも発電所から家庭に届くまで、どんな過程を経ているのでしょうか?

井上発電所で作られた電気は、送電・変電・配電という三つの区分を経て、家庭まで届けられます。まず発電所で電圧をぐっと高く昇圧して、長い距離を運び、それを変電所で段階的に降圧して、各家庭へ配っていく。
電流による発熱で生じる送電ロスを抑えるために、発電所で電圧を上げる工夫をしています。

発電所→送電→変電所→各家庭

石山なるほど。送電・変電・配電、すべての区間に電線が存在しているわけですね!

井上その通りです。鉄塔に張られた架空送電線、海の底を通る海底ケーブル、地中ケーブル、街中の配電線、そして建物の中の屋内配線まで。姿を変えながら、ずっと電気の流れに寄り添っているんです。国内の送配電線をすべてつなぐと、総延長距離は地球を100周以上する規模になります。

石山地球を100周以上ですか!普段は目に見えないところで、活躍してくれているのですね。
最近で言うと、太陽光や風力といった再生可能エネルギーが増えてきましたが、再エネが増えると、電気の届け方にも変化が出てくるのでしょうか?

井上大きな変化が起きています。今までの送電は、大型の発電所から一方向に電気を届ける構造でした。ところが再エネは、発電する地点が分散していて、発電量も不安定という点で、これまでとは異なります。特に、再エネ発電の適地と、電気を使う消費地である都市とが、遠く離れている。この長距離・大容量の送電をいかに効率化するかが、大きな課題として挙げられます。その解決策として、いま注目されているのが「直流送電」なんです。

再エネだと…発電地点の分散/発電量が不安定/発電地と消費地(都市部)が長距離→解決策として、直流送電に注目が集まる!

石山その直流送電は、私たちが普段使っている電気の送り方とどう違うものなのでしょうか?

井上家庭の電気は交流といって、電気の極性がプラス・マイナスと周期的に変わっています。一方、直流は極性が変わらず一定です。乾電池やバッテリーをイメージしていただくとよいですね。長距離の送電では、直流のほうが「ケーブルの絶縁体に起因する特有の送電ロスが少ない」という特長があるんです。

石山では、なぜこれまでは直流ではなく、交流が使われてきたのでしょうか。

井上交流には、「電圧を簡単に上げ下げできる」という大きな利点があります。これによって、世の中の送電の主流が交流になりました。ただ、長距離の送電に交流を使うと、どうしても送電ロスが大きくなってしまう。
一方、直流は送電ロスが少ないのですが、世の中の電気はほとんどが交流なので、送電の両端で「交流を直流に」「直流を交流に」変える変換器が必要になります。直流で送電ロスを減らせる効果が、この変換器の費用を上回って初めて、直流送電は実用化できる。そしてその効果は、超長距離で初めて得られるものなんです。これまではそれほど長距離の送電が必要なかったので、直流が採用されてこなかったというわけです。

石山たしかに再エネの発電所って地方や海の上など、都市から遠いところに作られることが多いですよね。そうした超長距離の送電を可能にするために、電線はどう変わっていっているのでしょうか?

井上送電距離が長くなったことで、直流の優位性が現れてきたわけですが、直流には直流固有の問題があります。
交流用のケーブル絶縁体をそのまま直流用として使うことはできず、直流用の絶縁体を新たに開発する必要がありました。また、長距離送電となると、それだけ長いケーブルを作らなければなりません。ケーブルは長い距離の中でたった一点でも欠陥があると壊れてしまい、電気を送れなくなってしまうものなんです。一点の欠陥もない長いケーブルを作るには、非常に高度な製造技術が求められていました。
そこで、あらゆる研究機関や企業から、最先端の知識・ノウハウが結集されて、近年ようやく、実用可能なレベルにまで技術が到達したところなんです。

石山そうなんですね、すごい!特に長さが必要となる海底ケーブルなんかが関係してくる技術ですよね。

井上おっしゃる通りです。日本は島国ですから、北海道と本州、本州と四国のように、海を隔てた場所で電気をやり取りする所に、海底ケーブルが布設されています。こうした海底ケーブルは長距離になることが多いので、送電ロスの少ない直流送電が適しているんです。国内に限らず、欧州をはじめとした各地の国際連系線※にも、直流海底ケーブルが多く使われています。海底ケーブルは深い海に布設することもありますから、水圧や腐食、物理的な損傷に耐える絶縁材や保護構造も必要です。
※国家間や異なる電力系統の間を結び、電力を融通し合うための送電設備のこと。

石山そうした海底ケーブルの布設において、課題になっていることはありますか?

井上そうですね。海上の風車から陸上へ電気を送るのに、なによりケーブルが必要です。さらに、日本では風の強い地域が東北や北海道に偏っていて、発電する場所から消費地である大都市までが遠い。そのため送電ケーブル、特に海底ケーブルの整備に、膨大な量のケーブルが必要になります。これに応えるには、「国内の製造能力の増強」と「施工を担う人材の育成」が急務なんです。それに加えて、銅やアルミニウムといった「原材料の安定的な調達」も、いまや世界規模の競争になっていますね。

石山最後となりますが、「電気の運び方」が変わることで、私たちの生活や社会はどのように変わっていくのでしょうか?

井上今後、より再生可能エネルギーの活用が進むことで、化石燃料への依存を減らしていくことができます。「未来の地球環境を守ることは、電線なしには実現しない」と言っても過言ではないと思っています。

石山電線は人間の生活だけでなく、地球環境を支えられる可能性も持っているんですね。今後も電線や送電について、もっと知っていきたいです。本日はありがとうございました!